ダーク・ウォーター/ウォルター・サレス@吉祥寺東亜興業チェーン

makisuke2005-11-29


先週の水曜日の話なんですけど、ウォルター・サレス監督の新作「ダーク・ウォーター」みてきました。ウォルター・サレスは私の大好きな監督のヒトリ*1。願うべくはやっぱり、ブラジルという(もしくは、ブラジルに留まらず)土地に根差した映画を届けて欲しいと思ってしまうのだが。この新作もやっぱり嫌いではないのな。ホラー映画に留まらず、叙情的な湿度の高い美しい映画に仕上がっていた。冒頭の雨のシーンから、見る喜びに溢れているような。怖がらせるというよりも、切ない余韻を噛みしめるような。そんな映画。母親がぎゅっーと娘を抱きしめるシーンを見る度に、なんとなく人恋しくなるような映画でもあった。そして、土地(土)ではなく、水に支配されていた映画なのだけれど。水というものは、いろんな表情があるのだなーと。つくづく。清も濁も、温も冷も、さみしさも憂鬱も禍々しさも。それらすべての感覚を水という実態のあるようなないようなこの液体が、私たちに感じさせているのだなと。

*1:「セントラル・ステーション」「ビハインド・ザ・サン」「モーターサイクル・ダイアリーズ

この頃の読書

電車の中では、川上弘美の懐かしい場所を巡るエッセー「此処彼処」を読んでます。今、3分の2くらい。カワカミのエッセー相変わらずいい感じです。新婚旅行で言ったマダガスカルの話や裏庭の茗荷の話、子供時代を過したアメリカの話なんかが、いいんです。カワカミという人は、大真面目にホラ話を考えているようなトコロがあって、それがいいんです。子供のような大女のイメージ。ぶきっちょそうで可愛らしい人。今回は具体的な場所の名を示してあるので、いつもより生身の川上弘美が感じられて、幾分おとなしめな感じ。少し窮屈そうに書いてる感じも悪くないです。時折「カマトト?」と意地悪をいいたくなるような部分もあるけれど、その「カマトト?」なトコロがいいんですって。カワカミは。
此処 彼処 (ここ かしこ) 百日紅 (上) (ちくま文庫) 百日紅 (下) (ちくま文庫) 百物語 (上) (杉浦日向子全集 (第7巻))
夜眠る前は杉浦日向子さん。「百日紅」を読み終わって「百物語」に。「百日紅」の北斎とお栄がとにかくいいんです。この世界にいつまでも留まっていたいくらいな。この妖しさと俗物加減とエネルギッシュな感じ。この世とあの世の境界線が今よりずっとあやふやで、活気に満ち溢れていた頃のこと。時代の熱気や人々の息遣いが聞こえてきそうな。人々が今よりずっとしぶとく生きてるような。


悔やまれるのは、あとがきで夢枕獏さんも書いてるように、杉浦さんが漫画をかくことをやめてしまったこと。もったいない。悲しいことです。そしてそのまま、日向子さんが天に召されてしまったってことは。なんともいいようがないこと。かなしく、もったいなく、残念でなりません。