コロシヤ

 

子どもの頃
フルサトにはコロシヤがやってきた
年に一度か二度
村の公民館の広場にやってきて、店開きをした



私たちはおばあちゃんに連れられて
コロシヤに会いにいった
殺してもらう動物を手に手に
順番待ちの長い列に並んだ



年をとって家畜としての役目を果たせなくなった
ニワトリとか
山羊とか
もう死ぬのを待つばかりの年老いたウサギとか
チャボとか
そんな動物達を抱えた
長い長い列が出来た
コロシヤはいつも村の人たちで賑わっていた


コロシヤはいつも
刃物を使って一息に動物達の息の根を止めた
あっという間にくるり剥いて肉と毛皮に分けた
毛皮や内蔵は引き受けて
私たちには肉になった動物達が渡された
それをお金を払って受け取って
まだ温かいその塊を手に手に家に帰った


家に帰ると
おばあちゃんが動物達をおいしく煮てくれた
裏の畑でとれた野菜もたくさん入った
飼っていたニワトリも
妹達と一把づつ名前を付けて可愛がっていたウサギも
私たちはみんなみんな残さず食べた


年老いた動物達はみんなとても堅かったけれど
おばあちゃんはいつも
ちゃんと噛んで残さず食べらっしよ。と、厳しく言ったから
私たちは言いつけを守って
しっかりとよくよく噛んで食べた
いつも残すことなんて思いつきもしなかった