いるのにいない日曜日/三好銀

いるのにいない日曜日 (BEAM COMIX)「この世の中に、ふたりぼっち」

偶然入った本屋で「いるのにいない日曜日」をみつけた。なんだか「マチブセ」されていたみたいだなあと。不思議な気持ちになる。時間の軸がぐにゃっと歪んだみたいな。へんな気持ちにつかまった。


「三好さんとこの日曜日」をはじめて読んだのは、もうどれくらい前になるんだろう。10年?うううん、10年は優に超え、もっとずっと昔のことなんだということを、あとがきを読んで気がついた。あれから、随分時間が経っていたんだってってこと。


「この世の中に、ふたりぼっち」


二人の日曜日の物語を読むたびに、わたしはそんな気持ちに捕まる。閉じている訳でもない。窮屈な訳でもない。のに。しあわせな、ふたりぼっち。どうしようもない、ふたりぼっちのしあわせな憂鬱に、捕まってしまう。本を開く前は、そんな二人が変わってしまっているのじゃなかろうかと、少し怖かった。本を開いて、少しも変わっていない様に嬉しくなって。あとがきを読んで、あの頃描かれて「三好さんとこの日曜日」に載りきらなかった分なのだと知って、あああっつと納得をして。結局苦笑いだったんだけど。


だけど、だけど


あの頃の続きだって構わない。真空パックされていただけのことだって構わない。この世の中のどこかに、しあわせなふたりぼっちが生き残っていたんだから。それは、わたしにとって、うれしいこと。しあわせなこと。すべてが生き絶えたとしても、生き残るものがあるってこと。そんな証のようなもの。どこかできっと生き残っているはずの、そんな贅沢な憂鬱があるってこと。そしてそれは、なくなったりしないんだってこと。どこかできっと「マチブセ」みたいに、わたしをひっそり待っているかもしれないってこと。それを信じてみたくなった夜だってこと。