8月のレシーバー/ニーネ/ザバービアレコード/

「ニーネ」はスリーピースバンド、あのピーズを思い出すとか出さないとか、それでも彼らはピーズに熱い思いを抱いてるって、何処かで読んだような、おぼろげな記憶が。レビューがあったから、のっけておく一昨年の今ごろは、そんなに暑かったのかと、そんな所に感心したり。確かこのレビューを書いたあの頃、介護中に事故を起こして仕事を干されていたっけか。もう二度とこの仕事は出来ないのかもしれないなどと、悩んでいたっけか。まだ、やってるよと、あの日の私に話してやりたい。

僕の作った歌なんかよりも僕のほうがいいよ 僕のほうがずっといいよ

仕事が干されたので、デッキのボリュームをガンガン上げて、窓全開にして、掃除をしているわけ。掃除でもやってないと、ダラダラと眠っちゃったりして、余計に頭が痛いしね。春でもない夏でもない、この季節はわりと好き。風があるから。風が強くって、急ぎ拵えで育った緑もしきりと頭を振っているみたい。窓の外からは中学校の校内放送。運動会かなんかをやってるみたい。人生で一番うっとおしい季節を、元気にグラウンドを駆け抜ける中学生なんて、涙が出るね。

自分で淹れてる麦茶は美味いよ。アイスコーヒーに負けないくらい濃ゆくして、ロックアイスぎゅうぎゅう詰めのグラスで飲むの。汗かきグラスはいいね。早い夏を感じちゃうから。

「ニーネ」の「8月のレシーバー」がしっくりくる。自分勝手な言いぐさばっかりで、あきれちゃうけど。ああしろこうしろ注文ばっかで。だけどだけど、ざらっとした荒削りな音と歌がすぐ隣りいるような錯覚を起こすんだ。肌が触れ合う感じが確かにしたんだ。

君も起きてくれないか 君も起きてくれないか 君も起きて同じ景色を見て欲しい


誰かが言ってた「私たちが切に欲しいと思っているのは、私たちと同じ体温の音楽。ただそれだけ。」ただそれだけなんだ。

近頃のアタシはやばいよ。こんがらがってるよ。温度がどんどん下がっているみたい。何処にも行きたくないし、誰にも会いたくないし、喋ってみたってろくな事はあったためしがないし、考え出してろくな事などあったためしがないし。ただもうマシーンみたいに自分の体を使っていたい。開きっぱなしのシャワーみたいに、ガンガンと音を浴びていたい。ただそれだけ。

いつも疑って いつも疑って 何でも見ているよ 薬飲んで 薬飲んで 元気出しているよ

自分の温度が上がる音を探してる。音が毛穴から染み込むまで浴びていたい。ノーミソを占拠するのは、残された音だけでいい。ただそれだけ。

何も出来ずに 何も出来ずに 消えていく人もいるよ いつも楽しんで いつも楽しんでいられる人は変だよ

寒い季節の歌が流れて、寒いよと歌う声が、沁みる。冬の歌が好き。暖かさを求めてるから。いつも求めてる、ただそれだけの歌が好きだから。

掃除は好きだけど、いろいろ引っぱり出して、とっちらかして。ぐちやぐちゃにして。みんな放り出して、パソコンに向かったから、部屋の中がとりとめがなくなっちゃった。何だかいいね。片づけとかお終いとか、気にしないで全部放り出すのって。

トイレに行こうとしたら、猫の水飲みをひっくり返して。部屋の中がびちやびちゃで。まいったね。

だけどさ、少しだけアタシの温度が上がったみたい。いまは、アタマの後ろのところがじーんと痺れていい気持ちで。これからは、辻褄合わせのお掃除を、ロボットみたいに頑張ろうかと思うのよ。マシーンみたいにね。

ああもう、アタシは大丈夫。今日のトコロは大丈夫。だから今日のトコロはお礼を言うよ。とりあえず。ニーネありがとうって。そっぽを向いて。

                  2001-05-15/巻き助