介護マシーンとしてのワタクシ

38度あった熱は、一晩でうそみたいに下がったけれど、咳が止らずマスクを付けて仕事に行く。仕事柄、マスクをしていても咳は嫌がられるだろうなと、席を外しては目立たない所に回って、コンコンゼイゼイ、と咳き込んでいた。


それを目ざとくみつけたおばあさんが、上を向いて口を大きく開けてご覧と私を促した。ぱっくり開けた私の口に、小さな杓子に盛られた白っぽい粉がぱらりと入れられた。

  

苦いようなザラザラするような、いかにもまずうい味がぱあっと広がって、ちょっと「うええっつ」となったけど、辛抱強く我慢して、唾液で溶かしながらゆっくりゆっくり咽の奥の方に流し込んだ。すると不思議に、甘いような清々しいような心地よい味に変わっていった。


龍角散だよ。うちはみいんなコレで治してきたから、アンタもすぐによくなるよ」そう言って、おばあさんは目をすいっーと細めた。龍角散の不思議な味と「アンタもすぐによくなるよ」の言葉が魔法みたいに効いて、私の咽もすうっーと良くなったような気がした。


仕事帰りに私も龍角散を買って帰った。小さなペコペコとしたアルミの缶が可愛い。小さな杓子にのっけて咽の奥にぱらりと落とす。苦いようなザラザラするような、いかにもまずうい味がぱあっと広がって、ちょっと「うええっつ」となったけど、やっぱり我慢してたら不思議に、甘いような清々しいような心地よい味に変わって、咽のイガイガが取れてすっきりしたように感じた。「アンタもすぐによくなるよ」「アンタもすぐによくなるよ」「アンタもすぐによくなるよ」おばあさんの言葉を何度も舌の上で転がしてみたら、もっと甘く清々しいような心地よいような気持ちになって、明日になったらこの咳も止っているような気がしてきた。