ブッチメリー/The ピーズ


ブッチーメリー The ピーズ1989-1997 SELECTION SIDE B

ずっと具合が悪くって、発熱と吐き気と生理痛の苦しみの中それでも電車に乗っかって仕事に行く。誰に何と言われようと、アタシにとってはギリギリな状況だ。随分吐いたし、少しだって胃の中に食べ物があったらもうたまらなくむかむかとしてくるし、それでも行かなくてはならない仕事があるし。とにかくギリギリだ。ギリギリだ。だから私は丸くなって丸まって、この世の果てに想いを馳せる。丸まって腹を押さえて痛みと熱で気が遠くなりながら薬をバリバリ噛み砕いて、この世の果てを夢想する。

とどめを とどめを とどめをハデにくれ
夢は見た やり尽くした 打ち止めだ おらオサラバだ


この血の流れが終われば、ウソみたいに引いていくこの気持ち。だけどアタシは簡単にだめンなる。面白いように簡単にだめンなる。だめンなってだめンなって。紙クズみたいな、くしゃくしゃな気持ちンなる。ぬかるみみたいな、ぐちゃぐちゃな気持ちンなる。そう、あの頃のアタシみたいに。

シニタイヤツハシネ シニタイトキニシネ
シニタイトキニシネ シニタイヤツトシネ
シニタイヤツハシネ

だから、ピーズをヘッドフォンから流してる。ふらふらの体で聞いている。酸素マスクみたいに、点滴みたいに、輸血みたいに、どぼどぼと流してる。アタシをこの世に感染させないために。どぼどぼどぼと流してる。頭が痺れて何にも考えなくなる。そしたらやっと息がつける。すべてが消えてしまうように。ボリュームを上げていく。上げて上げて上げていく。気が遠くなる。私の下らない脳味噌も、アタシの重たい血袋も、砕け散ってしまうぐらいの爆音で聞いてやる。

やりたい事が多すぎて 何にもやりたくなくなっちまった
やりたくない事が多すぎて 何にもやりたくなくなっちまった
会いたい人が多すぎて 誰にも会えなくなっちまった
考えることが多すぎて どうでもよくなっちまった

ピーズを聞く度に、アタシは切羽詰まる。切羽詰まって身動きが取れなくなる。


切ない歌もある。バカな歌もある。ラブソングもある。それでもアタシはその度に性懲りもなく切羽詰まる。切羽詰まって立ちすくむ。どの歌にも平等に、どの歌にも隔たりなく。私を切羽詰まらせるもの。それは、その一途さにだろうか?そのストレートさにだろうか?それが何故だかは分からないけど、1曲1曲を聞く度に、向かい合わずにはいられなくなる。


彼らの1曲1曲は、混じりっ気がない。難しくもない。言ってしまえば、バカみたいに単純に私の耳には届いてくる。言いたいことはヒトツ。たくさんは詰まっていない。その潔さはを思う時、それは痛ましさでもある。決して他人事ではない痛ましさ。彼らは一直線に終いに向かって疾走している。それを私は見物している。


巷に溢れる新しい人たちの新しい歌の、複雑さや精巧さやセンチメンタルさやオシャレさを思う時、アタシとの距離ばかりを感じてしまう。そして私はそれらのスバラシサを全く求めていないことに気がつくのだ。そんなもの要らない。ちっとも要らない。そんなものじゃあ、この世の果てに置いてきぼりなアタシは救われたりしない。私が欲しいのは、そんなもんじゃ、ないって。

ハンパな笑顔でこっちだけ見てた 
にぎやかなラストにわざと一人
傷を舐めあうのさ 痛みが分かるのさ
確かに未来が昔にはあった

ゆーワケで せっかくだし 悪いけど
続くよ まだ二人いる
何かまたつくろう 場所は残ったぜ
君と最悪の人生を消したい

そして最悪の人生を消したい

今日ピーズを聞いていて、心の底から死にたいと、そう思った。そして、腹が減った。