「ハイウェイ」くるり

ハイウェイ

This is the reason why he goes on a journey. 

映画「ジョゼと虎と魚たち」のラストにはこの曲がかかるの。「くるり」の「ハイウェイ」。

僕が旅に出る理由はだいたい百個くらいあって

そもそも、この映画の音楽自体を「くるり」が担当していて、すごく控え目に挿入された音たちは、とても静かに力強く、この映画を支えていたなと思う。音の印象よりも、キスをする音や息遣いや生活の音やなにかを大切にしてあった所も、いいなぁと思った所。とても静かな「間」が映画の中にたくさんあって、それに一役買っていたのが「くるり」の音楽でもあると思うんだ。

映画を見終わって、このまま家に帰るのが、なんとなくさみしくなってしまって。このまま、この映画と手を放してしまうのが、つまらないように思えてしまって。もう少し誰かと話をしていたくなって。例のコレ「くるり」の「ハイウェイ」を「お持ち帰り」したというわけなのだ。

これからも、この曲を聴く度に「ジョゼと虎と魚たち」という映画を抜きに考える事は出来ないのだろうけど。(よい歌がきっと全てそうであるように)この曲からは、映画とは全く違う、もうひとつの物語をそこにちゃんと感じることが出来る。終わりと始まりをしっかり感じられる歌。たくさんの感情が生まれ出す歌。ここから始まる物語を確かに感じられるから、映画を観終わった後の胸の重苦しさが少し薄れて、甘くやさしいモノに少し変わって、なんだか私もまた歩き出せるような、そんな気分になったのだ。

僕には旅に出る理由なんて何ひとつない


あれからiPodに落として、何度も何度もこの曲をかけてる。

くるり」の歌詞は掴みきれない所がいいの。すべて手の内を明かさない所。自分でさえ掴みきれない気持ちのようなモノを、掴みきれぬままの言葉にしている所が。もどかしいような。ちょっと掻きむしられるような。誰かの肩をぽんとひとつ叩きたくなるような。やさしさや勇気をいただいてしまうような。やっぱり自分でも掴みきれない感情のようなものが、後から後から沸いてくるから。何度でも何度でもリピートしてしまうの。

独特のユレが気持ち良くって、私の歩くテンポにもとても合う。そこも好きな所。てくてくてくてく。歩き出したくなる歌。ゴトゴトゴトゴト。電車に揺られてみたくなる歌。ふらふらふらふら。何処かに行きたくなる歌。歩きながらこの曲をかけたなら、みるみる機嫌が直って。ちょっと踊ってるみたいに、私は歩いているのじゃないかと思う。上機嫌なのに、うつむき加減で。さみしいけれど、結構元気で。わくわくしてるけど、随分臆病で。はしゃいでいるのに、今にも泣き出しそうで。

手を放してみようぜ
つめたい花がこぼれ落ちそうさ


そんな私の気持ちを「くるり」に笑われているような。そんな気分になって。

                  2004-02-15/巻き助