僕の好きな先生/ジョルジュ・ロペス /DVD

公開時、子供たちの愛らしい笑顔の予告編を見ていて、見なくっちゃと思った作品。DVDでやっと見ることができた。フランス中部にある小さな学校の先生と生徒達の日常や学校生活を綴ったドキュメントなんだけれど。後味は複雑だった。

大方のこの映画の評判を読むと「ロペス先生」の子供と向き合う姿が感動的、心を打たれる、先生のあるべき姿、ということになっているのだけれど。私の場合は、どこか窮屈さを感じてしまった。確かに映画としては、淡々と作ってあって、風景なんかを写す時間も長く、むしろゆったり眠たくなってくるのだけれど、眠たさとは別にどこか息苦しさを感じがしてしまった。

「良い先生」とは何だろう?と、考えてみた。「ロペス先生」は確かに熱心で、とことん子供たちに話しかけ続ける。それでも、その声のトーンは穏やかで、先生自身のキャラクターも紳士的(魅力的)で、日本で言う「熱血漢」「熱血先生」というイメージとは程遠く、受け入れやすい姿にも映る。押さえた優しい声で、しかし何度も言葉をかけ続ける先生の姿は、先生としての「あるべき姿」のようにも映るのだけれど。同じ間違いを繰り返し、おどおどする子供や、成績の奮わない子、家族の病気に涙する子供に、そっとしておく、そっと見守るということは、出来ないのだろうか?と、思ってしまう場面もあった。もっと伸び伸びと好きなように、やらせてあげるわけにはいかないのだろうか?

幼い子に何かを教えるということは、大人である先生が「正しい」「こうあって欲しい」と言うことを、伝え続ける(悪い言い方をすれば、押し付け続ける)ことなのかもしれない。そんなことも思った。それでも、「正しい」「正しくない」だけに別れる、そんな世界は私にはやはり窮屈に感じてしまう。

ラストシーン、笑顔に包まれて、ロペス先生が子供たちと、キスとハグで別れる場面は確かに私もつられて笑顔になったけれど。子供たちが将来何になりたいか?と聞かれて「先生になりたい」「先生になって命令をしたい」と、言っていたのが印象に残った。無邪気な屈託のない発言だっただけに、余計に気持ちに引っ掛かるものがあった。映画としては少し先生に対しても、意地悪な撮り方かもしれないなと思ったりした。