アモーレス・ペロス/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ/DVD

「21グラム」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の「アモーレス・ペロス」を観る。ついついタイミングが合わずに、今日まで見逃していたというわけ。

まずは、ずしっと手応えを感じた作品だった。夢中になった、引き込まれた、当てられたっていう感じかな。ばらばらにされた物語がパズルのように、びたっびたっと噛み合っていくという手法は(パルプフィクションしかりメメントしかり21グラムしかり)やっばり気持ちが良くってたまらないし。映画ならではのスピード感とはこういうことかといつも思う。誰かと誰かが、何処かですれ違い(望むと望まないとに関わらず)関わったことで少しだけ運命を変更させられていくという現象も、見ている私にいろんな思いを呼び覚まさせてくれる。町ですれ違っただけの見知らぬ誰かにも、あの人にも。その人その人の人生があり、出会わなければならない運命が待っているのだと。そんな当たり前のことを再確認させられる。

オムニバス形式で繋がっている三つの話は、どれもこれも「21グラム」同様、暗く重たい。その暗さ重たさが、私には決して不快ではなかった。むしろ心地よかった。「メキシコ」という土地のもたらすパワーだろうか?そこで暮らし生きていく人たちの持つ、パワーだろうか?とにかく根っこのしっかり張った映画だと思った。以前観た「シティ・オブ・ゴッド」や「オール・アバウト・マイ・マザー」「トォーク・トゥ・ハー」なんかも思い出す。それらの映画に共通しているのが、(詳しいことは分からないけれど)民族や土地や政治や宗教や生活状況や、そういうその国を作っている要素がバックボーンとしてきちんと存在しているということ。だから映画に説得力がある。かなわないなぁと思ってしまう。

物語の話に戻せば、人間の欲の醜さと、人間の考えることの浅はかさと、どんな時でも少しだけ滑稽に映ってしまう生きていくということを思い知らされる映画だった。因果応報と言い切ってしまうには、残酷と言おうか、皮肉と言おうか。「神」という存在が、この映画(この監督の映画といっても良いかも)を観ていると、すごく自然に伝わってくる。「神」はきっと、私たちのことを物笑いの種にしているのじゃないかって。高みの見物をしているのじゃないかって。そんな、高い所からの目線を感じる映画。誰かの手のひらで躍らされているのが人間じゃないのか?と思ってしまう。

なんといっても、事故現場から救い出した犬(オムニバスのどの話しにも犬が出でくるが)の行動には、言葉を失った。なんだか自分の愚かさを突きつけられたみたいで、しんどかった。ついつい「ああっ」て、声が漏れたぐらい。

私たちは欲の前にはあまりにもストレートで阿呆で盲目で。ブレーキの壊れた車みたいで。それでもアクセルを踏み続けなくっちゃ気が済まないのかもしれないね。それが生きてるってことかもしれないね。などと思いながら、エンドロールを眺めていました。

「21グラム」と比べる(比べるというのもなんだけれど)と、粗削りで乱暴だけど、力がある。どこかユーモアも感じる。情けなさもある。「メキシコ」という土地に乗っかって、好き勝手にやってる感じがして、私は大いに気に入りました。