自殺自由法/戸梶圭太

makisuke2004-08-30

自殺自由法

自殺自由法

日本国民は満十五歳以上になれば何人も自由意志によって、国が定めたところの施設に於いて適切な方法により自殺することを許される。但し、服役者、裁判継続中の者、判断能力のない者は除外される。

「自殺自由法」をまさに一気読みする。戸梶圭太を読むのはこれが初めてだけれど「トカジャクソン」とか「牛乳アンタッチャブル」とかタイトルと噂は耳に入っていて。いつかは読んでみたいと思ってた人。今回はAが購入してきたこの本を横取りして、一気に読み上げたというわけ。あとがきといおうか、小説の終わりの所に作者のこんな言葉が載っている。

本作脱稿直後、筆者は鬱に陥りましたが、わずか二日で元に戻りました。読者の皆様もご安心ください。すぐに日常に戻れます。どんな日常かは人それぞれですが。
                                 戸梶圭太

読了後、どうやら鬱に陥る様子はみられないけれども、読んでいる間も、本を手に取れない時間も(ヘルパーの仕事している時とか)この本のトーンにずっと引っ張られていたのは確か。そうやって本の世界に引っ張られていると、いつものようにこちらが本当か、あちらが本当か、よく分からなくなってくる。分からなくなってくると、いつものように、どちらの世界がより居心地が良いか?という話になり、なんとなく現実の方が怠くなってくる。もしくは夢の中のような気分になってくる。夢の中で、入浴介助をこなしたりや家族からの相談事に耳を貸したり掃除全般をこなしていると、ますます何が何やら分からなくなってくる。

この本は、どこか懐かしい感じがした。高校生の頃に読んでいた星新一ショートショート筒井康隆の本を思い出す。そのせいかジャンクなんだけど、どこか静かにも感じてしまう。誰かの頭の中にでき上がった世界を覗き込むような、そんな静けさ。自殺と人を殺すか人に殺されるかそれを食い物にするかだけの話ばっかりなんだけれどもね。