血と骨/ヤン・ソギル

血と骨〈下〉 (幻冬舎文庫)
血と骨」の下巻を一気に読了した。最後は一気に読んだ。面白かった。この生々しさと乾いた感じ。この荒々しさとおかしな感じ。たくさんの要素が未消化のままにぶち込まれて煮込まれたような、この本のエネルギーにとにかくあてられた。

上巻読み終わった辺りでは、物語に慣らされてしまって、展開がやや平板にも感じられたし。繰り返される暴力と、どんな目に合おうとも立ち切れない、夫婦や親子の絆にいい加減理解不能に陥っていたのだけれど。いつの間にやら、だんだんそれが、面白くなってきてしまった。先にも言った通り、だんだん登場人物達が何を考えているのか分からなくなってくる。物語として流れていたものが物語としての輝きを失って、ただ出来事に付いていくだけのようになっていく。最初はそれが物足りなかったのだけれど、だんだんにそれが面白くなってきたのだ。修羅場の連続の中で人々は考えることを止め、ただただ目の前にある命やお金や性欲や食欲やそんなものをひたすらに追いかけてる。それが時に格好悪く、目を背けたくなるのに、なんだか面白いのだ。ドタバタ喜劇を見ているようでもあって。私はうっかり笑ってしまった。