真夜中の五分前/本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-B
私の良くない傾向として、まずはこの手の本は、端ッから読まない、選ばない、つまらないんだろうなと高を括ってしまう。という傾向があるのだけれど(だって、元恋人が使っていた五分ズレた時計とか、死んでしまった恋人とか、双子の片割れとか、いかにも設定が恥ずかしいじゃないか!)。読み切って、とても良かったのだ。少なからず感動してしまった。設定はともかくとして、私はこの主人公の男が決して嫌いではなかった。例えば以前に読んだ白石一文の「僕のなかの壊れいていない部分」の主人公には激しい嫌悪感を感じて読み進める気持ちになれなかったのだけれど、この本の彼には、好感を持って読み進めることが出来た。彼の一見利己的で他人に関わることを避ける生き方と、それでも関わってしまったコトモノヒトにはきちんと対応していくという、ある意味身の丈の誠実さがとても好きだった。本多孝好という人の本は、はじめて読んだのだけど、とても目線が細やかで筆の進め方が丁寧な所も気に入った。設定だって、この人の細やかな書き方があると、決して無理を感じなかったような。

あえて文句を言うならば「五分ズレた世界」がきちんと書けていなかったかななぁと。彼の世界が五分ズレているように、感じなかった所。