Ray(レイ)/テイラー・ファックフォード

 
ジェイミー・フォックス」はまさに「レイ・チャールズ」そのもの。渾身。Rayが乗り移ったかのようでした。もうこの映画を観て、ストーリー云々をどうこういうのは野暮ってものでしょ?とか思う。あの曲達が流れて、あの芝居を見せられたら。そして私は、やっぱりABCレコードに移籍する前の。彼の曲が、好きなのだなと確認した。


視力を失っていく、盲目になっていくシーンはやはりどうしても身につまされてしまう。記憶の中の色の世界はあくまでもウツクシク、光のない世界で生きていかなくてはならない、その中から音楽を生み出さなくてはならないという重圧と孤独感を想像してみる。想像するだけで、私の心も震えてくる。「心まで盲目にならないで」と、彼の母親は繰り返し言っていたけれど、画面からしっかり「盲目の心」が伝わってきた。それでも、彼はたくさん愛されていた。たくさんたくさん愛されていた。だから音楽も生まれたし、ヒトリで立っていられたのだし、心の目も開けたのだと思う。客である私は、映画の中の彼を見ているけれど、彼は何も見ていないという事が、何とも言えず不思議だった。