世にも美しい数学入門/藤原正彦/小川洋子

makisuke2005-05-18

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
いやー、久し振りに痺れました。面白かったですよ、この本。数学を「美しいか」「美しくないか」だけで語り切る数学者の藤原先生は実にチャーミングで、本を捲り始めてすぐに数学というモノに対する見方が全く変わってしまいました。数学に魅入られ、数学に身を捧げた人たちの話は、非常に興味深く。数の中に隠されている数々の必然を知れば、この世の中を作り上げたヒト(神様)の存在を感じずにはいられず。それら総てを音楽を奏でるように詩を朗読するように、語ってくれる藤原先生と小川洋子さんの対談には理解を越えた感動があり、敬虔で壮大で微細な気持ちになってくるのですよ。例えば学生時代に数学に対してイヤな思いでがあり、思い出したくもない!などと思っている人がいたら、是非手に取ってみて欲しい(そう、例えば我が妹のはみこなんか、ぴったり!)。「数学はただ圧倒的に美しい」「役に立たないから素晴らしい」「美しい数学ほど、後になって役に立つものだ」などなどの発言を読んだだけでも、この本のスバラシサが垣間見えるけれども、天才数学者を生み出す基盤は「とにかく美しいトコロ」「何かに跪くココロを持っているトコロ」というのも、興味深いね。ゼロを生み出すインド人の哲学感や日本人ならではの美意識が産み出した定理やマイナスの概念の存在の苦痛(笑)などなど、とにかく今思い出しても、ため息が出てしまうほどの一冊。深くココロに響いてくる本ですよ。ホントに。そして、今更お勧めするのもおこがましいほど有名になってしまったけれど、数学者の存在に深く心を動かされた事によって書かれた小川洋子さんの名著「博士の愛した数式」も、改めて読み直してみたくなりました。あの時は、ちょっと意地悪く「上手すぎる」と思ったのだけど、あの本はきっと生まれるべくして生まれた、素晴らしい本だったのだなと再確認してしまいました。