介護マシーンとしてのワタクシ(ビデオ観賞編)

見終わって、晴れ晴れとした気持ちになるような作品にすること。黒沢明の覚書より。

訪問すると奥さんから「今日は洗濯物でも畳みながら一緒にビデオを見て下さいね、主人も楽しめると思いますので」とのメモ書きがあり、画面には始まったばかりの「雨あがる」が流れていた。すでに車椅子に乗せられ、テレビの前に連れてこられた状態のご主人と一緒に「まあ、たまにはこんなのも良いかな、丁度見てないし」と、ビデオ観賞。いつもどおり表情の読めない彼ではあるけれど、じっと画面を見つめてはいる。楽しんでいるのだろうか?それでも最初こそ、水分を取らせたり、声掛けしたりしつつ仕事モードで見ていたけれど、気が付くとワタシはすっかり彼を置いてきぼりにして画面に見入っていたのでありましたよ。凛とした声と所作が以外にもとても良かった宮崎淑子や、一挙手一投足がまさに絵になっていた寺尾聰や、大らかなバカ殿振りがぴったりだった三船の息子や。皆とってもとっても良くって。気が付くとワタシうっかり貰ってしまったのでもありました。夫を思う宮崎淑子のセリフに。ああ、夫婦っていいなぁと思いましたよ仕事中に。画面もキラキラと美しく深呼吸しているようでしたし、登場してくる人たちの気持ちも皆澄んでいて、本当にココロが晴れ晴れとするような映画でした。
雨あがる 特別版 [DVD]