泣かない女はいない/長嶋有

泣かない女はいない
ぶらりと入った小さな古本屋に、この本は売っていて、ワタシは「あっ」と思ってすぐにレジに持っていった。喫茶店と行き帰りの電車とお風呂の中と風呂上がりのベットの中の時間を使って、今日一日でこの本を読み切った。もちろんBGMは「NO WOMAN NO CRY」。ボブ・マーリーを久し振りに掛けながら一気に読んだ。なんていい小説なんだろう。素直にそう思った。幅広の道の端を一列になって歩く一団の最後尾につけるトコロとか、雨の日にその一団の人々に勝手に連帯感を感じるトコロとか、職場の人間に違和感を感じながら、気が付いたら随分彼らを好きになっているトコロとか…。ワタシもまだ同僚という名の人々に囲まれて働いている頃、昼休みはヒトリでこっそり公園に出掛けていったっけか。そして、ただ、ぶらぶらと公園まで散歩してきたということを説明することが難しい人たちというものが、確実にいるということも知ったっけか。それでもとにかく、総ての感情がフラットで、優しくて、しみじみしていて、本当にヨカッタ。

読みながら考えていたのはgitzoさんのこと。会ったことも名前も知らないない彼女を、それでも確実に感じることが出来た。上手く説明できないけれど、すぐ隣に彼女がいて、会話しているような感覚が常にあった。あくまでも感覚なんだけど、でもすごくリアルに。そんな感覚に今日は一日捕まったままだった。

自分がへこたれている瞬間に愛すべき人間がなんの悲しみもなく過しているというのは、すごく安心することなんだと、思った。