優しい音楽/瀬尾まいこ

優しい音楽←このbookデザインはいただけません。ダサッ。
読み終えました。今作は、三つの短編からなっているのだけれど、ちょっと物足りなかったな、正直。嫌いではないけれどもね。この人特有の温かさというか、人と人との良い距離感は感じられたけれど。不倫相手の子供のお守りを強引に押し付けられる話「タイムラグ」は、なかなかだったけれど、全体的に今一つぐっぐっと惹き付けるものが足りなかったように思います。

そもそも「図書館の神様」でこの人に惚れ込んで以来、新刊を出す度に追いかけているのだけれどね。とにかくこの人の「食べ物」の書き方が好きなのだな。食べる事作る事、それらのもたらす効果を知っている人だと思うのね。人をしょんぼりさせたり元気にさせたりするのに、上手に「食べ物」を持ってくる。どの本もそんな「何でもないのに、美味しそうな食べ物」で溢れてる。家族で食べる雑駁で美味しいと、恋人同士が食べる気取っていて見栄えが良くってそれらしいモノとの比較だとか。クリームも飾りもない、ただの焼き立てのフカフカスポンジケーキを食べる場面だとか。喉につるっと滑り込むモズク酢だとか。クリームのパスタに。フレンチトーストやステーキやただのキャベツや卵かけごはんや。「7's blood(卵の緒)」の中に出てくる腐りかけのケーキを食べるシーンなんて、ホントにゾクゾクしたものですけど。今回は残念でした。期待した食べ物(蒸かしたさつまいもぐらいか)も堪能できませんでした。