しあわせのねだん/角田光代

しあわせのねだん
読み終えました。そもそもは夜寝る前本(ワタシは、電車本と寝る前本と平行して二冊、時には三冊同時に読み進めるのが常なのだ)として読み始めたのだけれど、面白くって電車の中でも喫茶店でも夜寝る前でもこの本を読んでしまって、あっちこっちと持ち歩いて、揚げ句にあっという間に読み終えてしまいまして、いささか淋しいぐらいの気持ちを味わっております。この本は、いわゆる角田光代の家計簿的エッセー。この間も書いたけれど、カクタさんのエッセーはとにかくいいです。この本もかわらずとってもとってもいい。幾ばくかやさぐれていて、可笑しくって、ふむふむと頷けて、他人とは思えなくって、そして最後はちゃんとしんみり来て、ああ良い本を読んだことだよと、感じ入ってしまう。

仕事はまるでサラリーマンのように、8時から5時、間にきっちり一時間の昼食休憩を挟んでいるトコロだとか。長蛇の列を作りながらも我が息子に秋刀魚選びを勧める母親にぶち切れそうになるトコロだとか、食べ慣れれば食べられるようになるのではとわざわざ4700円の松茸を購入して頑張ってみるトコロだとか。文句炸裂の母親との温泉旅行で学んだことだとか、そして家計簿をつけながら(誰に見せるのでもないのに)誰に対してか、小さな見栄を張り始めて、弱点は記さなくなってくる辺り、ホントにホントに他人とは思えませんでしたってば。