シド・アンド・ナンシー/アレックス・コックス
シド・ヴィシャスとナンシーを、ひいてはカートとコートニーを、ましては阿部薫と鈴木いづみを。いまさら、魂の恋人達とか、運命の恋人達と呼ぶつもりもないけれど。それでも、ある時代を色濃く生きていた人たち。終いにはいつもかくれんぼをしたまま、見つけてもらえなかったような人たち。帰り道が分からなくなって、ベソをかいてる迷子みたいな人たちに、会いたくなる。合いたくてたまらなくなる。
だから、シドとナンシーに会いに行く。そして、そんな日はいつも、ピザが食べたくなる。
それはもう、生地が薄くてカリッとしていて、チーズがとろっとした、ハーブなんかが乗っかっているような上等のヤツでなく。少し冷めかけていて生地も厚くって、あか抜けない感じのピザ。
それを、くちゃくちゃと音を立てて食べながら、コーラで流し込んでしまいたくなる。そう、あの日のシドみたいに。すべてを流し込んでしまいたくなる。シドとナンシーに会った日はいつも。