ベアーズ・キス/セルゲイ・ボドロフ/2002年/カナダhttp://d.hatena.ne.jp/makisuke/20040613#p3

保坂和志の「この人の閾」を読んでいて、この映画を思い出した「ベアーズ・キス」。小説と映画の接点は全くといっていいほどないのだけれどね。ただ、「だって、読むってそういうことでしょ」って姿と、自分とクマ、それしか見えないっていう、潔さが私の中で繋がって、思いはこの映画に飛んでいったの。

情報もいらない、本だって映画だって音楽だってなくたっていい(もちろん映画の中でそんなものは登場してこないんだけれどね)ただ目に見える世界と、その先にある愛するものだけ見据えていればいい。そういう少女の姿に、心奪われる。私が心惹かれる世界。恋愛の話をしているわけでなく、そういう狭くて行き場がなくて、だけどスマートな潔い世界。そこに惹かれる。私はなんとブヨブヨといろんなものを身にまとって生きているのかと、愕然とする。

視界が狭まって、窮屈で息苦しいぐらいの世界。身動きが取れないような、そんな閉じた世界に憧れる。時々、私は何に捕らわれていて、そちらに行ってしまわないのかと、考える。考えるけれど、分からない。それはクマがどこまで行っても、クマであるように、私がどこまで行っても、人間だからか?夜の闇が恐ろしいように、知らないという闇は怖いのかもしれない。少女が最後まで躊躇ったように、私たちは人間という本能で恐れるのか?恐れつつ、惹かれてしまうのか?