ゴッドファーザー(デジタル・リマスター版)/フランシス・F・コッポラ

ゴッドファーザー。映画館で観るのは、実はこれが初めてということで、自然、気持ちも期待も高まる中。客席は予想に反してなかなかの混みだった(マーロン・ブランドが亡くなってから賑わっているらしい)改めて言うまでもないけれど、ただただ面白かった。三時間余り夢中になって時間を忘れた。心配していたトイレにも立たずにすんで、一安心。始まる前にロビーで「休憩はありますか?」と聞いているお兄さんも見かける位だったけど。ホント私には、あっという間の三時間だったな。

いかにも、坊ちゃん坊ちゃんしていたアル・パチーノが、どんどん精悍に悪そうになっていくのに、見蕩れてしまう。この間見た「インソムニア」を思い出し(そのやつれ具合に)ちょっと悲しくもなったのだけれど。まさにこの時の彼は男盛りで色気があってねっとりと輝いてる。

先日亡くなったマーロン・ブランドの追悼というテロップも流れる。まだこの映画の中では若かったはずの彼(若さを感じられない役作り)の死と現実がダブって、胸に迫ってくる。その声その仕草(頬を手の甲でちょいちょいっと撫でる)その立ち居振る舞いから、立ち上がってくるヒトリの人間がとてもリアルだった。誰も彼もがみんなみんな映画の中に生きているみたいだった。

それぞれの人のいろんな人生が、縦にも横にも絡まっていて。映画の中の時間の流れに、酔ってしまう。ニーナ・ロータの物悲しい音楽が良くって、車や洋服や食べ物や時代の匂いにも酔ってしまった。とにかく感想なんておこがましいくらい、ただただ映画に溺れる時間を過ごしたような。満足でした。