山ん中の獅見朋成雄/舞城王太郎

makisuke2004-08-29


キーラとファンファーレ・チォカリーアのライブの合間の20分間の休憩で、獅見朋成雄を一気に読み切る。満足しました。「不思議の国のアリス」舞城版といった話。馬鹿馬鹿しい話運びでもあり、私は何を読んでいるのだ?という笑っちゃう場面も楽しい。音の視覚化が楽しい。頭で再現を試みていく音の数々。

そしてしつこく舞城王太郎の好きな所なんだけれども。主人公が圧倒的にいいヤツ、好きなヤツでもあり。大きなストーリーの流れというよりも、出来事が起こる中でひたすらに書かれている主人公の考えごとのような部分。出来事に臨む姿勢のような部分。どんな状況であろうと、どんな出来事が起ころうと、人間は常にいろんなことを考えているし、毎日は続いているのだし、その中で結構タフに順応していくんだなということを、爆音(ノイズ)を思わせる筆運びの中で気付かせてくれる所。だから私はクライマックス(サビ)に向けて高まっていくというよりも、随所随所に好きがあり、随所随所に生きるヒントがあり、随所随所に書き出したくなるような「使える」言葉が溢れているように思うのだ。あくまでも足元を照らすような、足場を固めていくような、地道な考えごとの蓄積披露が大好きなのだ。