血と骨/ヤン・ソギル

血と骨〈上〉 (幻冬舎文庫)
なかなか熱の下がらないベットの中で、ヤン・ソギルの「血と骨」を読んでいた。今上巻が終わった所。こうやって在日朝鮮人に対する日本人の根強い差別意識を読まされると、この所の韓流ブームっていったいなんなんだ?と、思ってもしまうんだけど…。そもそも村田喜代子の「百年佳約」を読んで、朝鮮の人たちの考え方(と言おうか、根づいている思想や宗教観や生活や食べ物)に興味を持った。その部分をアタマに入れて読んでいくと、英姫という人の行動に納得してしまうし。同胞の仲間達が、あれこれと英姫親子をかばい助けていくのも、納得がいく。小説全体から時代の匂いがしてくるし、魚の内臓や動物の臓物の匂いも立ち込めてくるようだし、そこに暮らす人たちの息遣いや暮らしぶりが立ち上がってくる。金俊平という怪物も豪快だし、何があっても、ただただ自分の体を元手によく働き、美味い料理(私には知らない料理もあり興味深い)を作っていく英姫という人の、そのしっかりしたブレない部分にも、好感が持てたんだけど…。

ほぼ中盤に差しかかった辺りで、物語がドラマチック過ぎてなんだか逆に平板に感じてしまっている。なんだかどんどん誰もモノを考えていないのじゃないかな?と思わせられる展開に。読む方も出来事についていくだけになってしまった。これではこちらもモノを考える隙がない。ちょっと残念な感じではあるのだけど…。とにかく下巻に進みます。