帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。/ハナレグミ

帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。
引っ越しを済ませて、やや落ち着き始めた新しい家は、とにかく静かで静まり返ってる。今まで暮らしていた部屋は、寄せては返す波のようにひっきりなしに行き交え車の音がうるさいぐらいでウンザリしたものだけれど、こうやって全くその音が途絶えてしまうと、それはそれでサビシイもので。人は何時だってなくしてしまってからいろいろと気が付くものですね。と言うのはまた別の話で。今日はそんな新しい部屋にお似合い(そう)なアルバムを、牛乳と豚のバラ肉とエリンギと水菜とバナナと一緒に買って帰りましたよ。帰ってから、さみしくなってもいいように思いまして。

思った通り、タカシ君の声はすぐさまこの部屋に馴染んで、するすると溶けていきましたよ。「ティップ ティップ」「かえる」がとてもスキ。ボリュウムをあげてあげてあげていくと、家の猫(ぎょんすけ♀)が「誰?」と、顔を上げて声のする方を見やっていましたよ。彼女も少しずつこの部屋に馴染み始めているみたい。