泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)
ヒンシュクをあえて承知で書くのですけれど、江國さんの小説は一言で言ってしまうと、私には「イケスカナイ」のですね。この間読んだ「間宮兄弟」が思いの他よくって、思い切って読んでみたのだけれど、以前抱いたとおんなじ「イケスカナサ」に包まれてしまいましたよ。コトバの切れ味が良い事も、上手いのも、カッコいい事も認めますけれど、やはりどうしたって私は苦手。そもそも私は恋愛体質ではないのだなぁと、しみじみ感じてしまいます。泳ぐのに、安全でも適切でもない場所に飛び込んで溺れ死んでしまうことを、私だって不幸とは思わない。その寸前に、飛び込んだ人だけが見れる特別な光景を見るためだけに生きる行き方がある事も、よく分かる。むしろ、人よりは余計に分かっているつもりでもいる。でも、だからって、その光景に辿り着くのが、どうしていつも「恋愛」を介してでなくてはいけないのだろうか?それがどうしても、腑に落ちない。愛でなくても恋でなくても、人は「濃縮」された世界に辿り着けるし、野蛮にも勇敢にも愚直にもなれると思うし、私はいつでもそうなりたいと、思っているのだから。