庭の桜、隣の犬/角田光代

庭の桜、隣の犬
直木賞受賞まえに書かれたこの本「庭の桜、隣の犬」を読んで、久し振りに嫌な気持ちに捉まった。そうそう、この感じ。これが角田光代だよね。と、改めて思い直した。このうっすらとまとわりついてくる嫌な感じ。登場人物達から発する嫌な匂い。風通しが悪くって、もしくは、風通しが良過ぎてスカスカで、誰もが腹に何かを抱えて、その抱えているものさえよく分からずにら、だらだらと生きている感じ。その感じが全く否定しきれない所が、読んでいる私にとって、厄介なのだよね。結婚ということをこんな風に書いてくれる人を私は他にしらないし、この淀んで出口がないような気分は、私だって気が付いていないわけじゃない。時々感じる、自分が難破船のようなモノに乗り込んでいて、連れ合いと二人ただただ行くあてもなく流されているような、あの何とも言えない気分。愛でもない。嫉妬でもない。もっと厄介ものを抱えて私たちは何処へ向かうのだろう?という答えの帰ってくることのない、永遠のクエスチョン。持ち続けなければならない、ビジョンと、放り出してしまいたくなる気分。とにかく、正直、落ち込みました。この本の責任はかなり大きいですけれど、でもだからって、嫌いではありませんので、あしからず。