ここに幸あり/中野翠

ここに幸あり毎年、年の初めのお楽しみに読んでいる中野翠の日記。「サンデー毎日」に連載されたのモノをまとめた'04の日記を、今年はこんな時期に読了しました(お恥ずかしー)。たかだか一年前の出来事が、遥か昔の出来事のように感じられるには、参りましたが。興味と関心は激しくあるのだけれどいささか出遅れた感がある「古い日本映画のこと」「落語のこと」「着物のこと」は、みんなこの人の文章を読んで、さも知ったかのような気分にさせてもらっています。中野翠さん、ありがとう。そして、気持ちは沸き起こっても上手くコトバに表すことが出来ない、時事問題も、改めて振り返ることが出来まして。しばし胸に止めなおしました。中野さんの日記で振り返る'04は、子供たちにとって厳しい事件がたくさん起きた年だったようだ。相次ぐ虐待に同級生による殺人事件に北オセチアのテロに。その中で中越地震で助け出されたあの男の子の一件は「イノチがむきだしになっているかのような、無心の子どもの姿に、何か強く感じるものがあった」と思う。そこに「単純で、根源的で、本能的なところから来る感動」が、確かにあった。私にも。

そして、さらに今更感が濃厚なのだが、イラクで亡くなった橋田信介さんの著書「イラクの中心で、バカとさけぶ」を紹介している中に強くうなづかされる部分があった。

悲惨で恐い「戦場」に反対するのはバカでもできる…もうそろそろ、「戦争」と「戦場」をごっちゃにすることから卒業しなくてはならない。「戦場」の悲惨さを語るのは、単にそれは"泣き言"であることを悟らねばならない

今までいわゆる「戦争映画」の見方が私にはどうしても分からなかった(何かをキチンと感じてはならないという気持ちに縛られて不自由な見方をしていたように思う)のだけれど、もっと映画は映画として楽しんで良いのだということを確信することが出来た。何だか胸がすくような思いを味わいました。