近頃の読了本(2)

魂萌え !実家での帰省中に読み切りました。妹(四女・二児の母)に「皆が集まって楽しくしている時に、ヒトリで本を読んでいて楽しいですかぁ〜?」としつこくしつこく茶々を入れられながらも「だって久し振りに桐野面白いのだもの」と、読み切らせていただきました。最近の彼女の本には、どうしてもイタズラに人を不快にさせたいというような匂いがあって、そろそろ読むのもどうなの?と、思っていましたし、このタイトルにも不安を煽られていましたけれど、どうしてどうして面白かったです。いつもと大きく違って、むしろ読み終えて良い気分になってしまうような、そんな話で。六十歳手前で突然夫に死に別れた専業主婦・敏子に降りかかる様々なことどもが書かれているのだけれど、世間知らずの敏子が、まさに世間の荒波に漕ぎ出すようにして、いろいろな出来事に遭遇していく様、わくわくしました(終盤の告白もすごく納得)。善人とも悪人ともつかない登場人物たちが、とてもリアルだったし。大きく見れば、そんなに世の中恐いことも酷いことも、恐い人も酷い人もいないのじゃないの?と、とてもポジティブに考えられるような、そんな話で。私のまだ到達していない六十歳手前という年頃が出会う様々なことは興味深く、いちいち新鮮に読みすすめられました。少し大げさに言うなら、本を置くタイミングが計れないくらい。ワガママとアルツハイマーの境目が分からなくなってくるっていうのは、かなりリアルだったし。老いというテーマは、本当に先行きの見えない心細い船出のようなモノどろうなと。今次点で、こうしたい、ああしたいと思っていることが、果たしてどのくらい実現出来るのかは分からないけれど、思うこと考えること判断すること決めることは、けっして無駄にはならないのではないかな。とにかく心細い船出も「どうとでもなれ」「とことん行きなさい」という気持ちになれば、本当にどうにでもなるだろうし、とことん先の先まで行けるのではないかと。そんなことを考え、遅咲きデビュー敏子の行く手にエールを送りつつ、まだ想像すらつかないけれど、いつの日かやってくる私のその日にも思いを馳せての読了となりました。いやはや、満足。