近頃の読了本(4)

ポーの話

いいそらのむこうに、つながっていることですよ

少し前になりますけど、いしいしんじの「ポーの話」読みきりました。よかったです。とてもとても。これはやはり、いしいしんじのこれはやはり最高傑作ではないかなと。まずはポーがいろんな気持ちに鈍感(アホ)なところがよかったな。そういう意味で無邪気なトコロ、たまらなかった。無邪気なポーだから、残酷なトコロも無神経なトコロもやさしいトコロも一緒くたに持っていて。足りないところはヒトツヒトツ自然に学んで取り込んでいくトコロほほ笑ましかった。それでも、あくまでも無邪気なポーがほんとに愛しかった。読んでいる私も、ポー同様、大きな流れに身をまかせるようだったな。「うなぎ女」「メリーゴーラウンド」「ひまし油」「天気売り」「いぬじじ」なんて、コトバ(登場人物の名)が出てくるだけでも、わくわくしてしまったし。動物園や川や橋や海が出てくるトコロも文句なく好き。いかにもいしいしんじの世界という感じ。ポーが流されていく、その川や海がけっして美しくないトコロもよかったな。そしてそして、やはり圧巻だったのは、ポーの姿が見えなくなった後半の何十ページか。その何十ページかのうねりは、コトバや思考を忘れさせる(止めてしまう)高揚感がありました。肉体に直接働き掛けるような、高揚感。この本にはとても時間がかかってしまったけれど、最後まで読めたこと、この一冊に出会えたこと、とてもとてもよかったと。そればかり考えています。