親切なクムジャさん/パク・チャヌク@シネマスクエアとうきゅう

映画の結末と展開に触れているようないないような。まあ、その覚悟で読んで下さいまし。


いやー、よかったです。素晴らしく。相変わらず座り心地満点のシネマスクエアとうきゅうのシートに身を埋めて、まるで凍りついたように観賞しておりました。パク・チャヌク監督は、相変わらず凄まじい映画を撮るのですね。参りました。一見悪趣味と思わせるような、衣装や背景の絵柄はやはり健在で。映画がはじまってすぐから、ずっと胸がドキドキしっぱなしでありました。

白痴 [DVD]←クムジャさんのイ・ヨンエは「白痴/黒沢明」の原節子を彷彿とさせてくれました。ちなみに白痴(痺れました!この映画)は、リバイバルレイトショーで三時間以上立ちっぱなしだった記憶が…。遥か昔の話ですけれど。

この監督のバランス感覚とでもいいましょうか?その塩梅が絶妙なのですよ。全編目を覆いたくなるような残酷なシーンの応酬なんだけれど、その中にもおかしみみたいなモノが漂っていて。人間をいろんな角度から見せてくれる。善とも悪とも言い切れない。決して一色でない、複雑な色合いを持った私たち人間というヤツを余すことなく見せてくれる。余すことなく見せてくれてなお、ただ純白の真っ白のまま、生きていくことは出来ないだろうかと、迂闊にも本気で私に祈らせてくれる。

憎い憎い相手を葬り去った後のクムジャさんの、泣き笑いのようなあの顔は、まさに般若そのものでした。恐ろしいのだけれど、あまりに美しく、彼女のココロの鬼を思った。罰を受けることは時に容易く、罪を引き受けること。認めて詫びて償うことは、あまりに難しい。自分の中に巣くってしまった罪に許されることはないのかもしれない。

そして多分、この監督は言い続けてる。本当の償いなど存在しないということを。罪の前では私たちは何も語れないということを。コトバというヤツはいつでも何かをごまかしてしまうのかもしれないから。コトバはあまりに軽いから。口を塞がれ目を塞がれて、コトバにならない涙を流すしかないのかもしれない。