この頃の読書

電車の中では、川上弘美の懐かしい場所を巡るエッセー「此処彼処」を読んでます。今、3分の2くらい。カワカミのエッセー相変わらずいい感じです。新婚旅行で言ったマダガスカルの話や裏庭の茗荷の話、子供時代を過したアメリカの話なんかが、いいんです。カワカミという人は、大真面目にホラ話を考えているようなトコロがあって、それがいいんです。子供のような大女のイメージ。ぶきっちょそうで可愛らしい人。今回は具体的な場所の名を示してあるので、いつもより生身の川上弘美が感じられて、幾分おとなしめな感じ。少し窮屈そうに書いてる感じも悪くないです。時折「カマトト?」と意地悪をいいたくなるような部分もあるけれど、その「カマトト?」なトコロがいいんですって。カワカミは。
此処 彼処 (ここ かしこ) 百日紅 (上) (ちくま文庫) 百日紅 (下) (ちくま文庫) 百物語 (上) (杉浦日向子全集 (第7巻))
夜眠る前は杉浦日向子さん。「百日紅」を読み終わって「百物語」に。「百日紅」の北斎とお栄がとにかくいいんです。この世界にいつまでも留まっていたいくらいな。この妖しさと俗物加減とエネルギッシュな感じ。この世とあの世の境界線が今よりずっとあやふやで、活気に満ち溢れていた頃のこと。時代の熱気や人々の息遣いが聞こえてきそうな。人々が今よりずっとしぶとく生きてるような。


悔やまれるのは、あとがきで夢枕獏さんも書いてるように、杉浦さんが漫画をかくことをやめてしまったこと。もったいない。悲しいことです。そしてそのまま、日向子さんが天に召されてしまったってことは。なんともいいようがないこと。かなしく、もったいなく、残念でなりません。