尻尾のある星座/村田喜代子

尻尾のある星座
壮大でヒトクセもフタクセも癖のある物語を書く、村田喜代子の新作エッセーを読んでいる。ちなみに私は彼女の小説の一ファンで「雲南の妻」「百年佳約」もとっても面白く読んだ。
雲南の妻 百年佳約

エッセーのほうは、尻尾のある生き物(つまりは人間を含めない動物)のこと、主には犬にまつわる話である。私は現在ねこを飼っているのだけれど、フルサトでは犬猫ニワトリチャボモルモット白色レグホンウサギと大抵の飼えるものは飼っていたし、友達の家では山羊や豚を飼っていたし、右隣も左隣も牛舎で少し歩くと牛の放牧場もあったというわけなので、そもそも動物はとても身近で親密な関係だ。犬だって全く嫌いじゃない。ただー敵を増やすことを承知で書くならー最近の室内で飼うキャンキャンと吠えたてる小さい犬が嫌いなだけで、基本的に犬(特に柴犬)は大の大好きだ。

犬は清らかな生き物だ。持ち物はエサ入れと水入れの容器に首輪とブラシだけ。鎖につながれて独り歩きもならず、同じ散歩道を主人に引かれて一生歩き続けても苦にするふうもない。

エッセーなのだけれど、そこはかとなく彼女の持つ妖しさの元が醸し出されていて、こちらもぐいぐい引き込まれた。面白い。一晩で読み切ってしまう勢いだったので、俄然もったいなくなりとりあえず少し休憩を入れたトコロ。ラブラドールのユーリィとの奮闘は(電車のなかだったのに)思わず笑わせられてしまったし、初代の犬シベリアンハスキーのルビィの最期には、目頭が熱くなった。動物実験や扼殺の話では、私たちが目を閉じ耳を塞いでいるだけで、動物達は過酷な運命を生きているのだなと。自分含め人間という生き物が呪わしいやら悔しいやら。