タッチ・ザ・サウンド/トーマス・リーデルシェイマー@ユーロスペース

映画は家でみる人=Aさんから「映画館にいかない?」と誘われたので、二つ返事でOKする。「タッチ・ザ・サウンド」。少女時代に聴覚を失うが、全身でもって音を感じる打楽器奏者のドキュメンタリー。彼女があらゆるモノの中に潜んでいる音を開放していく(ように私は見えた)様が実に実によかった。ずっとドキドキしながらみてました。私の中にも、静かにゆっくりと音が染み入っていくのがよく分かって。気持ちが良かった。満たされていくのが分かった。自分が弛んでいくのが伝わってきた。この世に存在するあらゆるものは音を持っている。この世の中は音で溢れていたんだ。それを感じられただけで幸せだった。音を探るためにモノに挑んでいる彼女は実に無邪気で楽しそうで、子供のような顔をしていた。音に出会うのが嬉しくて嬉しくてたまらないといった感じ。そしてどんどんどんどん音が生まれる様が心地よかった。あまりの心地よさに、眠気が襲ってきたのも事実で。私はしばし襲ってくる眠気と闘う羽目になったのだけど、あっさり敗北したAさんのかすかな寝息が聞こえてきたりした。その音と映画から流れる音が相まって、私がとてもとてもとてもとても幸せだったってことは。少しだけ映画をボウトクしているかもしれないけれど。許して下さい。静寂がいちばん大きなそして重たい音を持ってるってこと。静寂は音の対局にはいないってこと。ココロに残りましたよ。そしてそしてあの日から、私は耳を澄ませ続けているみたいです。