オーイ・メメントモリ/しりあがり寿

オーイ・メメントモリ (MFコミックス)

メメント・モリ」「死を想え」これがこの漫画のすべてである。死を想うこと。老いを病を想うこと。それが生活にすんなり同居していること。ひっそりと自分レベルでいかようにも、思いめぐらしシュミレートしていくこと。それはとても大切なこと。ナゼなら、それはとても自分が謙虚で真面目になるから。過剰になったり穏やかになったり。どこか甘美で心安らぐのだけど、恐ろしくもあったり、時にはばかばかしくもあったりするけれど。死を想うことで、自分がいかようにも変化していく。


私は想う。なにかヒトツの言葉尻だけを取り上げて、死を歪めさせてはいけないと。死を想いうっとりとした後には、何もないという圧倒的な空恐ろしさが待つのだし。死をイメージするその色も、暗黒であったり純白であったり。死が待つその世界も、光が途絶えたり満ち満ちていたり、実に様々であるのだから。だから片手落ちではいけないと。過敏になってはいけないと。軽んじてもいけないと。ありとあらゆるモノを飲み込んで見つけて育んで、そして出来上がる。それが死ぬということなのだから。だから私はただただ「想う」。想うことによってのみ、死は完全なモノになる。のかもしれないな。



しりあがり寿は言う「世の中なんて「大切なこと」なんてひとつもない。だけど「すてていい」ことも、ひとつもないのだろう」と。それは時に私のコトバになる。 この本を読みながら、私はしばしうっとりとした。そして「この世」への愛着が少しまた湧いたような気がした。