ダニエル・ジョンストンを買いに。

ダニエル・ジョンストンの歌 ロスト・アンド・ファウンド

仕事帰りに、ダニエル・ジョンストンを買いに街まで。(とある彼に敬意を払って)3軒のCDショップを回ってみたけれど、お目当てのアルバム「ダニエル・ジョンストンの歌」はみつからなかったので、いちばん新しい彼のアルバム「ロスト・アンド・ファウンド」を買って、とにもかくにも家路を急いだ。電車に乗るなり、買いたてのCDのパッケージをビリビリ破いて、歌詞カードを読んでみたり。夕飯は、今朝からぬか床の中で眠ってる胡瓜があるし、昨日のうちに仕込んでおいたサバの味噌煮やら切り干し大根の煮付けやらポテトサラダやらが残っているので、それで良しとしようと思ってみたり。帰りのスーパーでは、低温殺菌の牛乳を一本だけ買い物カゴに放り込んでみたり。久し振りに大阪に離れて暮らす妹にメールを送ってみたり。しながらも、気持ちはひたすらに家路を急いでた。


そして今、この部屋の中には、彼の、ダニエル・ジョンストンの音楽で満たされているのだけれど。一言で言ってしまえば、私はひどくひどく幸福なのだよ。もし幾分かの不幸せがこの幸福に混じっているならば、それは今日まで私が彼を、聞かずに知らずに気付かずに見つけずに来た事ぐらいだろうと、素直に思って。そう思ったら、わけもなく泣きたくなって。本当に少しだけ、泣いてしまった。


ゆるくて、あたたかくて、なんだか情けなくって、ひどく愛しい。あまりに愛しくて、抱きしめたくなる。あああ、きっとこの人は何処かがひどく「ダメ」で「足りない(もしくは、過剰な)」人なんだろうなと、私の「ダメ」アンテナがキャッチした。そして、あまりに、あんまりに彼の声が、彼の音楽が、私に、私のココロに寄り添ってくるものだから、途中、どうしていいか分からなくなって。席を立って、屋上に逃げだしてしまったくらいに。ドキドキしてた。高みから流れ落ちてくるみたいに、私の中にどぼどぼとどぼどぼと流れ落ちてくる、彼の声と音。その中で、私は息が出来ないくらい。この息苦しいほどの幸福に包まれて、私の今夜は、一ミリも過不足なく完璧だと小さく胸を張ってみた。