神の子どもたちはみな踊る/村上春樹

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る村上春樹著を読む。わたしはそれほど熱心な村上春樹を読む人ではないけれど、すすめられたりプレゼントされたりしたら、熱心に読みますぐらいの村上春樹を読む人ではある。この本はプレゼントだったので、熱心に読んだ。


村上春樹の短編が好きだ。彼の作る短編集は、きちんと順番が守られている感じがする。「タイランド」は「かえるくん、東京を救う」の前でなくてはならないし「蜂蜜パイ」は「かえるくん、東京を救う」の後ろに来なくてはならないといった具合に。だから短編集の最初から最後まで読み切ると、とても正しいことを成し遂げたような誇らしい気持ちにもなるのだ。 そんな所もとても気に入っている理由なのだ。


少し久し振りの村上春樹だった。けれど、よい意味で村上春樹臭さのようなモノをいつの間にか忘れて頁を捲っていた。終いに向かって、それはどんどん加速した。物語はどれも阪神大震災が起きてからまだ日が浅い時の出来事について書かれている。その連作短編になっている。最後の二作「かえるくん、東京を救う」と「蜂蜜パイ」はとくにわたしの心に残った。いつかまた、読み返したいと思ってる。


読みながら感じたのは、どの作品も、人生におけるいつかの時点で曲がったり歪んでしまった出来事を明るい方へ正しい方へと向かわせようとしている力を感じるということ。希望のようなモノが感じられるということ。希望の匂いがする気持ちのいい一冊だったということ。だ。


読み切って感じた軽い興奮のような気持ちは、自分も明るい方へ正しい方へ進んでいけるんだという確信に近いような気持ちだったと思う。人間も悪くないと素直に思えた気持ちだったと思う。すごく密やかだけど、確かにそういったことを私に語りかけてくる一冊だった。