潜水服は蝶の夢を見る/ジュリアン・シュナーベル

「潜水服は蝶の夢を見る」シネマライズ渋谷でみる。患者の目を通して写されるその映画は、靄がかかったようなくぐもったような、カラダの周りに膜ができたような感覚をわたしに与えた。それは息苦しいような重たいような眠いような感覚で、わたしはけっして嫌いではなく。少しうっとりさえしていた。水彩画を思わせるような、淡い柔らかいひかりの映画。例えば瞼を糸で縫い付けるそんなシーンでさえ、やさしい色味とやさしいひかりで出来上がっている。明るい曇りの空からむらむらとしたひかりが溢れているような色彩の映画。この監督が画家というのもうなずける。音楽がいいなあと思ったら「バスキア」の監督だった。ああなるほど。と、やっぱりうなずいた。トム・ウェイツヴェルヴェット・アンダーグラウンドや、ジョー・ストラマーの音楽が映画にやっぱり溶けてて、やさしい感じで使われてた。淡くやわらかい映画の中で、ジャン=ドーのふてぶてしい顔が好ましかった。彼は映画のトーンに抗うかのように、生々しくしっかりと生きていた。そのふてぶてしさが、わたしの中にくっきりと焼き付いた。