蝉時雨のやむ頃/吉田秋生

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

ー鎌倉4姉妹物語ーと、言われてしまうと、やはり4姉妹(長女/だけどしっかりしてないよ、全く)として生まれ育ったわたしとしてはやり過せないモノを感じてしまうんだけれど…。ということで、久し振りの吉田秋生を読む。相変わらず、すらっーとした線のキレイな絵だよなあ。切れ長で強い強い目の感じも変わってないよなあ。とまずは嬉しくなる。以外に笑わせてくれる所とかも。語りすぎない話の運びが、いいなあと思う。キチンと言いたいことを口にする人たちとか。いろんな人がいろんなことをぐるぐると考えていることとか。あったかい所と、ひんやりする所が両方ある所とか。やっぱり吉田秋生はいいなあと思う。


そうそう、吉田秋生という人は、「街」を描くのがうまいのな*1と思っていたけれど、この物語は「鎌倉」という「街」が、すごく立体的に描かれていて嬉しくなった。「いろんなものがつまってるって感じ」の古い家も、すごくよかった。姉妹で暮らすって、羨ましいなあと思った。大人になっても、ケンカしたり文句言いあったりむかむかしたりしながらも姉妹で暮らすって、羨ましいことなのだ。もっと大人になってしまったわたしには、帰省の度に顔を合わせる姉妹はいても、もう、一緒に暮らす姉妹はいないんだなあと思う。思うと、言いようのない気持ちに捕まってしまうことがある。「とりかえしがつかない」場所まで進んでしまった自分自身を思うようで。帰れない場所を知らされるようで。この気持ちはいつも苦手だ。だからわたしにとっての「姉妹で暮らす」は、叶うことのない願いのカタチのようで、祈りのカタチのようで、それだけでもう、キラキラと輝いているんだよってこと。スバラシイんだよってこと。

*1:河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)「河よりも長くゆるやかに」の福生とか/ラヴァーズ・キス (小学館文庫)ラヴァーズ・キス」の湘南とか/とか