アイム・ノット・ゼア/トッド・ヘインズ@シネマライズ渋谷

眠るぎょんさん


「6人の俳優」で演じる 「ボブ・ディラン」の物語をみる。みるまでは「6人の俳優」という所に一抹の不安を感じていた(薄くなってしまうのではないかとか気忙しい感じになってしまうのではないかとか)けれど、結果「6人の俳優」という所がよかったと思った。人間は言わずと知れた多面体でいろんな面を持っている生き物だけど。それをそのまま、6人でひとりを表すのが不自然でないというのが、きっと、ボブ・ディランという人の魅力でもあるのだと思う。

ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム [DVD]「ノー・ディレクション・ホーム(http://d.hatena.ne.jp/makisuke/20060208#p1)」をみた時も、ボブ・ディランという人が、ボブ・ディランという名の怪物になってしまった結果、そこに生きて存在しているだけでも奇跡というか物凄いことなのだな。と思ったけれど、やっぱり、この人の物語をみていると感極まってくる気持ちが抑えられない。当の本人は多くを語らない。もしくは、語ったことについて語らない。その潔さというか覚悟のようなモノが、彼の孤独を浮かび上がらせるようでもあるけれど。それでも、いろんな温度や色味をのせて、彼の歌はわたしに届く。いつまでもいつまでも色褪せるということなど知らないかのように。