ハッシュ!/橋口亮輔

makisuke2002-06-02

ハッシュ! [DVD]
ハッシュ!」を二回観てきました。結論から言ってしまうと二回観るが、この映画にとってあまり良くなかったかな?と、そう思っている。欲が出てきたのかな?文句がぽこぽこ出てくるし「映画」としてのアラが見えてしまったのだね。

私は普段そういう冷静な見方はしないの。イヤ、出来ないって言った方が正解で。だから二度目の「ハッシュ!」に、のこのこ出掛けていったのも「ああん、もう、こいつうー」って、おでこを「ちょん」て、つついてやりたい。やらずにはおれないなって。そんな可愛い映画だったから。お尻がムズムズってなるくらいシアワセな映画だったから。とにかく、またあの世界に浸りたいって。いそいそと出掛けていったのだからね。

最初の時の、あの感じをホントは伝えたかったの。あの感じだけをコトバにくるんで伝えたかったの。それが少し目減りしてしまったってコトが悲しいな。んー残念。つまりはそう言うこと。

だけどだけどね、この映画がよい映画だっていうことは、やっぱり動かしようがない。だから私は声を大にして言っておきたい。この映画が好きだってコト。「映画」としての云々を口にする方が断然「野暮」だってコト。そっちの方が遙かに「ピントずれてるぅ」ってコトを。

ナゼなら、この映画に出てくる人達、そのすべての人達が、確かにここにいるってコトが伝わってくるから。目覚めたり笑ったり泣いたりして、この人達はきっとここに生きている。そんなシンプルなことが強く強く伝わってくるから。

朝子の片岡さんは、あんな風に「んぱあ」とタバコを吸って、ぶっきらぼうに喋るのだろうし。直也の高橋和也は、何かにすねると、あんな風にアイスクリームを抱えているんだろうし。それだけでもうこの映画は「よし!」と言えるのじゃなかろうか。なんて思うのよ。

よい映画って(私の中でね)その世界が絶対にある。あるに違いない。んでもって、あることが嬉しい。嬉しくて嬉しくてたまらない。そういう映画なのですよ。だから私を魅了した映画達は、すべてパラレルに存在してるの。私の中で。いつまでもいつまでも。コトバ通りのリアリティとは別物のリアル。悲惨であるとか、ないとか。優しいとか、そうじゃないとか。そんなことで私のシアワセは計れない。正確であるとか、ないとか。事実であるとか、ないとか。そんなことでも私のリアルが計れないように。

そしてそして私は、なんと言っても直也がスキになりました。彼のあのぽんぽん口にしちゃう所。その度に私はクスクス笑わされてばかり。彼の持つ前向きなアキラメ感。不安定な安定感。それはゲイであればこそ身につけたモノかもしれないし、元々彼が持っていたものかもしれないけれど。その何かを突き抜けた、さばさば感がとってもチャーミングで。彼はきっと、とてつもなく淋しい夜の過ごし方を知っているんだ。

その直也と朝子が仲良くなっていく。とてつもなく淋しい朝の迎え方を知ってる二人が、だんだん仲良くなっていく。あの感じがスキ。分かり合うのでなく、寄り添うのでもなく、何となく並んで歩くあの感じがスキ。

私が一番好きなシーン。朝子が大学芋を買って、直也と合流して、たらたら話をしながら部屋に向かう、ほんの数秒のシーンなのですよ。

この映画に漂っている温かさは、きっと人肌の、誰もが安らぐあの温かさ。だからきっといろいろ悪口も文句も思いつくけれど、馴染んでしまうのじゃなかろうか。恋しくなってしまうのじゃなかろうか。悪くないねって思わせてくれるのじゃなかろうか。

とにかく見終わったアナタのお尻だって、ムズムズしますよ。シアワセすぎて。