恋の門/松尾スズキ

泊まりの仕事が終わって、映画に行く。会社には「午前の仕事は誰かにふって下さいよぉ、泊まり明けで眠れなかったら、ちょっと朝から仕事はキツイんでぇ」と、もっともらしく話しておいたんで。ちょっとスキップ気味で映画に行く。渋谷のシネマライズ松尾スズキ初監督の「恋の門」を観に。シネマライズの側には、先日ソネさんの日記「うたかたの日々」で知った「渋谷 わしたショップ」がありました。こんな所だったのねー。と、横目で眺めつつ、悔しい素通り。今度はここに「石垣島辣油」や「チャンプルミックス」や「コーレーグースー」や「海ブドウ」なんかを買いに来ようと、心に誓って。
沖縄で買ったダチビン沖縄で買ったダチビン
映画の方は、なかなか面白かった。案外王道的といいましょうか、ストレートに作ってあって。初監督作品なんて、とっても思えないぐらい手慣れた感じだ。勢いがあって、セリフが立ってて(捨てぜりふナシ!)、松尾スズキならではって感じの「間」が効いてて、つい「う、」と、詰まってから「うはははははっ」と、笑ってしまう感じは健在だ。

ただ映画を観に行った、って所から話をすると、ちょっと映画ならではのまとまりに欠けていたような。だから観終わって、ちょっと散漫な印象が残ってしまったかな?前半の勢いで最後まで疾走して欲しかった。まさに、暴走して欲しかったと思うんだけどな。

もう少し文句を言わせてもらうなら、酒井若菜演じる「恋乃」に、後半あれもこれもといろいろハプニングが起こりすぎて、ちよっといろんな意味で物語がぼやけてしまった所。松田龍平演じる「門」が、こだわり書きたいと思い続けていたモノが何だったのか、彼の「核」みたいなモノが分からなかった所(石にこだわり、石を使って、彼は何がしたかったのか?そしてそれをどう変化させたのか?)。二人の「譲れない部分」の葛藤と「それでもどうしても惹か合ってしまう部分」の繰り返しを、もっともっと丹念にねちっこくしつこく見せて欲しかったな。私としては。
そしてそして、レゲエ風のワイルドな出で立ちもとっても似合ってる松田龍平クンは、とてもとても童貞君には見えなくって、なかなか場慣れしていてエネルギッシュでアクティブそうなんで(行為が)、「恋乃」とのじれったいイチャイチャと、小島聖演じる「園 決理」との彼女リードの濃厚なセックスシーンとの落差がなかったような。そんな小さな不満の数々が降り積もって映画全体をベタッと平面的にしていたようにも思うのだけれど。

それでも、楽しかったのは本当。小島聖が、こんなに艶っぽくって雰囲気のある女優さんだって、知らなかったし。酒井若菜は文句なく可愛かったし、松田龍平はどんどん良い役者になっていくし。わき役にも「毛皮族」の女優さんが出ていたり「片桐はいり」も「田辺誠一」も映画監督の「三池崇史」も良い味だしてたし「大人計画」の役者さん達もてんこ盛りだし「キヨシロー」はあの通りだし、漫画家では「内田春菊」に「安野モヨコ」に「しりあがり寿」や「山本直樹」に「ジョージ朝倉」まで出ているなんて(この辺りはリアルには確認できず、あと確認です)、とにかく松尾さんの幅広い人脈が伺えて楽しさも増すというモノでした。

それでも、この映画は、作りは(チラシやなんかの)いかにも狭い人たちをターゲットにしているようでもあるのだけど、案外スタンダードで、良い意味で、松尾スズキ臭が弱いんで、広く沢山の人に楽しんでいただけるのではないかと思いますけど。