ある子供/ジャンピエール&リュック・ダルデンヌ@恵比寿ガーデンシネマ


音もなく流れていくエンドロールを見つめながら、この映画の中に音楽が全く流れていなかったことに気が付いた。気が付いて、それがちっとも不自然でなかったことにも気が付いた。説明的でなく、淡々と丁寧に人々を追いかけていく映画の作りに、私もじっくりと見入ってしまった。突き放すわけでもなく、凝視するわけでもない凄くフラットな視点。救いのない話ではあるのだけれど。決して悲劇的には作っていない。物語りにも溺れていない。情けないダメな人ではあるけれど、ブリュノは何だか憎めない。定職にもつかず、生まれた子供をモノのように売ってしまうのだけれど。ただただ子供のまんま大きくなったのだと思ってしまう。育てられていない子供なのだなと。やさしいのかやさしくないのか。いい子なのかただのノータリンなのか。分からないけれど、でも何だか憎めないのだな。改心するとか、目覚めるとか、劇的な物語は待っていてくれないかもしれないけれど。ブリュノがこれから育っていってくれたらなと思う。子供を家族を手にして、自分もろとも育っていってくれたらなと。