ゆれる/西川美和

少し前のこと、オダギリ・ジョーの 「ゆれる」をみた。人はとても多面的にできていて「信じる」ってことは、とても難しいことなんだな。そんな当たり前のことを考えながら、夢中になってみた。疑うことも信じることも、とてもとても曖昧で。いい加減な私たち人間がすることだからぐらぐらとやっぱり揺れっぱなしなんだよなと。


香川照之が、精神的にも肉体的にもぬめぬめしていて、気持ち悪いところがよかったな。ぬめぬめのお陰で「ほんとうのこと」が、なかなか見えてこないトコロ。だけど「ほんとうのこと」ってなんだろう。とも考えた。真実とか事実とかって、もしかしたらそれ程の意味を持たないのかも、しれないし。見る側の心の持ちようで真実だって事実だってぐらぐら揺れる。揺れて当たり前なんだよな。


だけどその先に、やっぱり辿り着きたい場所が見えてきたら、それを私は真実と呼びたいし。それを「信じる」ってことからは、もう揺れたくない。どんなに時間がかかっても、辿り着くべき場所はちゃんと存在しているはずで。何処かでひっそりと息づいているはずなのだ。