「全然大丈夫」@まずは、木村佳乃に謝りたい。謝らせて下さいと思った。

狩人 mito



男はつらいよ 寅次郎恋やつれ [DVD]


この間のこと、テレビでやっていた「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」を見た。マドンナが吉永小百合の、遠くの打ち上げ花火になぞられる、そうあの一本。改めて言うまでもないんだけれど、寅さん。いいんだよなあ。やっぱり。落語をみてるみたいだよ。相変わらず軽はずみで惚れっぽくてお調子者のムードメーカーで*1、私をたくさん笑わせてくれるんだけどーこの寅さんは、大人なんだよなあ。少しさみしくなるぐらい。引き際を知っていて己の身の程を知っていて、男の色気ってヤツも漂ってる。男版菩薩様のように、愛した女にはとことん寛大でー。


それにしても渥美清という人の、あの顔。この人のこの顔でなくてはならないって、あの顔がいいんだよなあ。あの顔。顔。顔と声と佇まい。ふうっ。って見惚れていたら「荒川良々」のあの顔と重なった。そうかあ、この顔なんだなあ。と、寅さんリメイクするなら是非「良々」で。永遠の失恋男は是非是非「良々」で。彼の顔には、すでにもう説得力のようなモノが備わっているんだよ。ずっとみていたくなるんだよ。だから彼の映画「全然大丈夫」でも、やっぱり彼の顔と声と佇まいにすっかり見惚れてしまっていた私でありました。

ということで、年末に買ったミニシアター回数券が残っていたので荒川良々の「全然大丈夫」をみて参りましたよ。この間みた予告編がなかなか良かったので「憩いたいなあ。憩いまくりたいなあ」と、仕事帰りに渋谷まで。

そして、まずは、木村佳乃に謝りたい。謝らせて下さいと思った。


最初にこの映画のキャストをみた時「木村佳乃」という辺りに一抹のふがいなさというか、心許なさ、しっくりこなさを感じていたのだけど。どうしてどうして、その木村佳乃が(少々びっくりしてしまうくらい)しっくりきていたし、良かった。彼女の薄幸というより、ひた向きにダメな感じが、新しい日本映画のヒロインのようにしっくりきてた。


いわゆる小ネタのような部分が多くって、それがその都度クスクスと笑わせてくれるものだから、案外小ネタ満載の雰囲気重視映画になっているのかな?と、勝手に気をもんだりしたのだけど。どうしてどうして、田中直樹木村佳乃の恋愛が、大黒柱のように頼もしくって、大きな映画になってた。二人で過す時間は、映画の中では短いというかわずかなんだけど、私の中では圧倒的に大きくて。うっとりするくらいだった。田中直樹演じる彼に、私はうっかり恋してしまったりしたし。二人の暮らしぶりや部屋もよくって、そこに二人をつよく感じた。人は身の程を知り、自分にぴったりの場所が見つかれば、ちゃんと息がつけるんだな。そんなことを思った。二人だからよりその人らしくなれることあるんだなって思ったりした。出てくる人たちが、みんな心地よい場所に、ぴたりぴたりと納まっていったようで。それも嬉しかった。手作りの竹輪にもぐっときた。気が付けは、すっかり憩ってた。憩いまくっていた。私はゆるくあたたかだった。外はまだまだ冷たい風が吹きすさぶ、二月の寒空の下であったけれどもね。


*1:長女な私はいつも寅さんに感情移入してしまうよ。自分の感情に精一杯で、いいとこも悪いとこも隠す場所もないほど丸出しで、周囲の人たちにいっぱい気をもませてーだけど、さくらはじめとする周りの人たちも、やっぱりいいんだよなあ。掛け合いも秀逸だ。記憶の中ではみんなニコニコ「いい人」なんだけど、こうやってみてみると、みんな全然ニコニコなんかしてなくて少しずつ仏頂面で、溜め息ついたりして毎日を生きてる。キツイこともどんどん言う。寅さんにも少しずつうんざりしてる。それでも記憶の中でやっぱりみんな「いい人」やさしい人あったかい人で、そこに愛があって。いいんだよなあ。そこが。