ゼア・ウィル・ビー・ブラッド/ポール・トーマス・アンダーソン@渋谷CQN

とにかく、素晴らしかった。映像も音楽も人々の顔つきも。夢中でみた。みることを貪った。その迫力。その美しさ。美しさにべったり貼り付く醜さ。醜さに貼り付く滑稽さ。壮大なこの映画がみせてくれたのは、あくまでも小さな男の物語だという皮肉さに満足した。小さいなあこの男、小さいぞ。醜いぞ。大きければ大きいほどに浮かび上がる小ささ。美しければ美しいほどに浮かび上がる醜さ。不穏さ。如何わしさ。この男が信じられなかったモノ許せなかったモノって、やっぱり小さいんだよなあ。あんまりにも。って、楽しみにしていたポール・トーマス・アンダーソンの新作 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」をみる。その壮大さ。終わりのかっこわるさと滑稽さ。美しさ。それらが古典のような神話のような味わいをわたしに残してくれた。人間て、人間たらねえ。全くねえ。と、人間よりも大きなはずの何かにそっと耳打ちしたくなるような映画だったよ。ジョニー・グリーンウッドの音楽が、ほんとうに素晴らしいよ。息子である男の子の無表情ぶりもよかったよ。地底から沸き上がってくるどくどくとした黒い液体にわくわくしたよ。事故のあの迫力に燃え上がる炎の力強さに、映画を見ているんだっていうことを忘れたよ。最初にも言ったけど、とにかく夢中でみたから。みることをひたすら貪ったから。