この頃の読書

makisuke2005-12-22

人生ベストテン←人生ベストテン/角田光代
とりあえず繋ぎのつもりで期待もせずに、気楽に手に取ったカクタの短編だったのだけれど、これが実によかったのだよ。この本の中にはヒトツの大きな流れがあって、その流れが私に心地よく響いてくれた。この短編に出てくる人たちの関わり合い方も実に面白かった。


短編の中には、行きずりとも言える相手との短い関わり合いがあり(その裏には長く関わってしまった相手との、身動きが取れない関わり合いがあったり)、その気まぐれで無責任な出会いが、現在の彼女/彼たちの、人間関係の行き詰まりを少しだけ助けてくれている。その「助ける」という行為が決して劇的なものではなくって、ちょっとした些細なモノで、そのさじ加減がよかったな。事実としては何も解決していないのだし、展開が変わっていくわけではないのだけれど、誰かと話をしてみようと思うこと、誰かと関わってみようかなと思うこと、そうやって気持ちが動いていくことはとても大事なんだな。何かが動き出す瞬間を集めたような、些細なんだけれど確かに手応えのある、そんな短編集だった。


人間の関係というものは、とても不思議なものだな。長く付きあった相手が他人のように見える日もあれば、行きずりみたいな相手との間に強い何かを感じる日もある。築いてきたと思えたものが、実にもろかったり。繋がれていないと思っていた手が、実はしっかりと握られていたり。人間という生き物も悪くないかも。まだまだ興味は尽きないかも。そんなことを思ったりした。

トリツカレ男/いしいしんじビリケンブック


いしいしんじさんの「トリツカレ男」読みました。よかったですよ。とってもとってもとっても。いろんなものにどうしようもなくとりつかれてしまう男「ジュゼッペ」が、無口な風船売りの少女「ペチカ」に恋をする話。いしいさんのラブストーリーってこんなにも切なくって胸が熱くなるんだね。知らなかったよ。トリツイテ、トリツカレテ、そうやってトリツカレアッテ生きていくシアワセを噛みしめてみた。恋というのが妄想で、ひとえにトリツカレなのならば、ココロの底からトリツイテ何も見えなくなってしまうくらい、どっぷりとはまってしまいたいものだよねと。

「私のとりつかれているものは、とりわけきみさ」

嗚呼、この本は私にとって極上最上のラブストーリーになること、間違いなし!なのです。